しょ〜うぃん広場

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オマーン旅行 2024

2024年のゴールデンウィーク前半はオマーンの首都マスカットに旅行に行ってきたのでその旅の記録を書く。 GWに妻が子どもを実家に連れて帰るとのことで、5日間の自由時間が手に入ったので、ここぞとばかりに海外旅行行きを決めた。

なぜオマーン

5日しかなく、複数国を回るような旅行は向いていないので、単発で興味がある国を選ぶことにした。悲しいことに、オマーンに旅行に行くと言うと大抵周りの人は、「え、オマーンてどこ?」「なんでそんなとこ行くの?」しか言ってこない。 オマーンを選んだのは以下の理由からである。

  • 中東の国に行ったことがない
  • 中東の中ではUAEカタールと並んで治安の良い国
  • ドバイと比べて外国人労働者が少なくてよりアラブ文化を知れそう
  • 人生初の砂漠に行ってみたい
  • そのうち人口世界一の宗教になるイスラムの文化を感じたい

旅行の記録

計5日間の旅行だが、フライトが片道15時間ぐらいかかるので現地にいられる時間は2.5日しかない。 旅をしながら考えたこと気づいたことはたくさんあったが、うまくまとめられないので巡った順に書いていく。

1日目

早朝3時にマスカット国際空港に到着し、8時から砂漠へのグループツアーに参加した。本当は移動の疲れが取れた2日目にツアーに行きたかったのだが、その日はツアーをやっていなかったので仕方なく1日目。移動で疲れているところに砂漠のワイルドな運転が襲いかかると車酔いするかと思って一応酔い止めを飲んでおいたが、なくても全然大丈夫だった。悪路という悪路はほとんどなく、道中はかなり綺麗に整備されている高速道路だった。

砂漠に行く道中。右奥に見える白いものは集落。

ちなみに高速道路は国が管理していて国内の高速道路は全て無料である。ほぼ片道2,3車線あって、市街に近いところは4車線もあり、最近も車線拡張工事があったばかりらしい。 所得税もないというので国はどうやって歳入を得ているのかとガイドに聞いたらオイルだそう。これがオイルマネーか。

荒野の中にたまに緑が見える。オアシスのように水が溜まるところであり、パームが植えてある。田舎の人たちはほとんどパーム油の生産をしている農家らしい。

オアシスに生えるヤシの木

砂漠に入る前に "Air" と看板に書かれた店の前に車が止まる。どうやら砂漠を走るにはタイヤを減圧する必要があるらしい。タイヤに空気が入りすぎているとすぐにスタックしてしまって動かなくなるらしいが初めて知った。砂とタイヤの設置面を増やすのが大事なんだろう、たぶん。(ChatGPTに聞いたらあってた)

砂漠は暑かったが、思ったよりも耐えられる暑さだった。まだ本格的な夏のシーズンでないので市街地で31℃ぐらいで、砂漠は日本の一番暑い夏の日ぐらいという感覚だった。 僕は海辺の町で育ったのだけど、地元の砂丘と比べると砂漠の粒子はその1/3から1/4ぐらいの細かさに感じる。海の砂はザラザラというイメージだが、砂漠はサラサラ。手の甲のシワの隙間にさえ入ってくる。 靴を履いて行ったのだけど、当然のように靴の中には入ってくるし、靴下も砂だらけ。ホテルに帰って靴下を洗ってもいつまでも砂が出てくるので諦めて捨ててしまった。

日産のパスファインダー(たぶん)で砂漠爆走。勝手にランクルで行くものだと思っていた。

2週間前の洪水の影響もあり、砂漠は水分を含んでいて、10cmぐらい掘ると湿った砂が出てくる。ぎゅっと握ると手の形に軽く固まるぐらいに湿っている。 砂漠に生息している植物はこの地中の水を吸って生きているらしい。

砂漠で頑張って生きる草

なぜか砂漠で腕立て伏せをしている僕

その後は砂漠の遊牧民ベドウィンの家にお邪魔した。そこは観光客向けに定住している家で、伝統的な装飾品を売っている。そこでオマーンコーヒー、Dates(ディッツ)を貰って、右手だけでどうやってタネを出して食べるかワザを教えてもらった。簡単にいうと人差し指と中指の間にディッツを挟んで親指でタネをその隙間に押し出すのである。日本人としては梅干しのように全部口に入れてから種を出せば良いと思うが、ガイドはありのままの状態でタネを自然に返すために食べる前に出すんだと言っていた。

ディッツとタネとコーヒーカップ

1300円でベドウィンが飼っているラクダに乗れるとのことなので乗ってみる。歩くリズムは馬よりもゆっくりとのっそのっそと歩き、砂漠のゆったりとした時間の流れを感じられる。なぜかラクダの背中で、これに乗りながら日本でコンビニに行ったら優雅だなとか考えていた。グループツアーに一緒に参加していたインドネシア人と2人でラクダに乗っていたのだけど、もう片方のラクダが自分の足に顔をすりすりしてきた。ラクダに好かれたらしい。 ラクダは座る時に前脚の関節がガクっと急に折れる。乗っている人からすると前に放り投げられそうになるのでラクダに乗る機会があれば降りる時は気をつけて欲しい。

ラクダは脂肪が少なく骨骨しい

その後はWadi Bani Khalidというオアシスに行った。 知っている人は少ないかもしれないが、オマーンやドバイ周辺で2週間ほど前に1年分の雨が1日で降る大洪水があった [CNNのニュース記事]。2週間前の大洪水で水が増水しているかと思ったら逆で、山から土砂が大量に落ちてきた影響で水溜まりが埋まってしまい泳げる範囲は狭くなっていた。 それでも水が全く無い世界にいきなり大きな水たまりが現れるのは神々しい。

大洪水では17人も死者が出たとの事だったので、ここまでの大洪水は人生で初めて?とガイドに聞いたら2,3年に1度はあることらしい。日本でいう超大型台風的な位置付けの模様。 オアシスに行く道中は土砂崩れで道路が片道通れなくなっていたり、地盤が緩んで陥没していたりそこら中で修繕工事がされていた。 細かなところではあるが、こういった工事にすぐに着手できるのも政府が潤沢なお金を持っている証拠だよなと思う。

砂漠までは片道3時間のドライブなので、帰り道は皆疲れて静かな車内だった。 今回のグループツアーの参加者は自分含めて4人で、1人は石油関係の仕事で出張にきたインドネシア人男性、後2人はアンゴラ出身でドイツで働いている女性2人。年齢は聞かなかったけどおそらく皆30歳手前ぐらいだと思う。なぜかアンゴラ勢は朝から疲れていて行きも帰りもずっと車の中で寝ていたため、道中はドライバーと僕とインドネシア人でオマーンについていろいろ話していた。 そこで得た情報は後半にまとめる。

ガイドのアハメドさんと土砂で埋まってしまったオアシス跡

2日目、3日目

マスカットは観光する場所があまりなくて、残りの2日でマトラスーク(地元の商店街という感じ)とマトラフォート(昔の要塞)、グランドモスク(少し前まで世界最大だったカーペットとシャンデリアがあるモスク)、国立博物館に行った。

ムスリムの観光客が唯一入れるスルタンカブールグランドモスク

特筆することはあまりないけれども、この辺りに行くとオマーンの文化、歴史が分かるのでマスカットに来たなら寄っておくと良いと思う。 どこも観光客で溢れているということはなくて、適度な人数の観光客がいる感じで良い。スークでは「こんにちは」と店主に声をかけれるので中国人との見分けが付くようになるぐらいには日本人は来ているらしい。声はかけてくるがしつこくないし、諸外国でよくあるゴミゴミした場所でのスリも発生しそうな気配はなかったので、治安の良さを感じた。

マトラスーク 商店街が迷路のようになっている

現地飯にも挑戦してみた。正しくはオマーン料理ではなくてインド料理なのだが、問題はどう頑張って右手だけで食べるかなのでどこの料理でも良いことにする。 店の中に手洗い場があって、店に入るとまずはそこで手を洗う。少し見づらいが下の写真の左端が手洗い場への入口だ。

トーブ(白い長袖)を着ていないので客もオマーン人ではなさそう

ローカル過ぎて英語が通じなかった。メニューくれとジェスチャーでお願いするがメニューなんかない口で言え!のようなことをアラビア語で言ってくる。CurryとChickenは通じたような気がしたがまだなんか言ってきてどうしようもないので近くで食べていた人のものを指差して、これをくれとお願いした。

円安でも167円のインドカレーオマーン紅茶

頑張って右手だけで食べようとチャレンジしたが、チャパティでもない薄く小麦粉を焼いたようなものは右手だけでちぎるのが難しく左手を添えてしまって失敗。食べ終わるとまた手洗い場に行き右手を洗って会計をする。

手洗い場

余った時間はホテルのプールで泳いだり、プールサイドで日に当たりながらYouTubeを見たりしていた。せっかくの休暇なので。

平泳ぎで一往復したら満足した

Q&A

旅行中にツアーガイドやタクシードライバーに教えてもらったことたち。

Q.なぜ建物は全て白くて高い近代的な建物がないの?
A.政府が景観保護のために規制をしている。多くの地方政府も同じ政策を取っているようだが、砂漠に向かう道中にはときどきピンクや水色の建物があったりした。

普通の戸建てがカッコいい

Q.なぜ女性は黒い服を着ているの?
A.実は黒でないといけないという決まりはない。10-20年前まではカラフルな衣装を着ていたが、ファッションの移り変わりで今は黒がオシャレ。黒の下はカラフルな服を着ているとのこと。ガイドは今の黒トレンドがあまり好みではないらしい。

Q.トヨタ、日産、三菱の車をよく見るけど、日本車はなんで人気なの?
A.日本車はBMVやベンツなど欧州の車と比べて熱に強くて長持ちする。ただオマーンは左ハンドルで、法律で右ハンドルの車を運転するのは禁止されているとのこと。少し前はドバイで輸入した日本の中古車を改造して左ハンドルにしてからオマーンに輸入していたらしいが、改造は危険だということでそのルートが禁止され、今は左ハンドル向けに生産された日本車を買うしかないらしい。確かに日本では見ないセダン型のヤリスが走っていた。

トヨタニッサン、ミツビシ、時々レクサス

Q.街乗りタクシーの運転手も含めて英語を喋れる人が多いけど、なんで?
A.まずそんなに英語は喋れるとは思ってないよ(笑) とのことだったが、少なくとも日本人よりはペラペラ喋るので深堀りすると、英語教育では読み書きよりも聞く話すを重視しているとのこと。日本人は読み書きはできるけど喋れないと説明したら、オマーン人は英語は書けないけど喋れると言われた。なるほど。また、ヨーロッパの企業が進出して来ているので、そこで働く人たちは英語を使うとのこと。タクシーの中で流れていたラジオも英語のチャンネルがあったので英語に触れる機会は確かに多そう。 学問をやるとなると英語の読み書きはやはり重要になるが、日本も観光業を押していくのであれば、進学率のそこまで高くない高校では会話に重点をおいた英語の授業をするとか良いのでは?と思う。そうすることで地方でも外国人が観光しやすくなりそうな。 後はやはりタクシーの運転手が英語を喋れるだけで移動中に現地のことが聞けてQuality of Travelがかなり上がるので、日本でもタクシー料金を2倍ぐらいにして若者にタクシードライバーになって欲しい。(日本なんて公共交通機関発達してるんだからタクシーもっと高くて良いでしょ)

街中は水の管理が行き届いていて緑が多い

Q.14時で道路混んでるけどどういうこと?仕事中じゃないの?
A.政府関連の仕事は14時に終わり、一般企業は16-18時ぐらいに終わるので8-9, 14-15, 16-19時がラッシュアワーになる。と言っても車線が十分に広くて車の台数も多くないので、渋滞と言ってもほとんど車が止まることはない。ちなみにマスカットの人口は100万人で人口密度は東京の1/75。 道路も立体交差やラウンドアバウトが多く、信号が不要な作りになっている。首都のマスカットでさえ移動中に見た信号は4,5個だけ。ラウンドアバウトは車両数が少ない時には快適だけど、ラッシュアワーになって渋滞すると途端に効率が悪くなって信号の方が良さそうだと学んだ。信号がないとスピードを出しすぎてしまうのか、スピードバンプも多い。

命の水

マスカット旅行Tips

これからマスカットに旅行に行く人へのアドバイス。(いるのか?)

  • 旅行時期は夏を避けるべき。5-10月あたりの本格的な夏は湿気の多い暑さで観光どころではないので、冬に行くのが良さそう。GWはギリギリ夏の始まりとのことなので、まだ耐えられる。オマーンの学校は3ヶ月の夏休みがあるらしいのでそこからも夏の暑さ具合が伺える。
  • カーディガンを1枚持っていくと便利。観光客に対しては女性も含めて、肌の露出に関しては干渉してこず、好きな服を着れば良いよというスタンス。僕も一応モスクにカーディガンを羽織って行ったのだが、入り口でスタッフに「それ暑いでしょ脱いで良いよ」と笑われた。カーディガンが便利なのは室内での温度調整が楽にできること。エアコンが強めに効いているところもあり、半袖では寒い。現地がいくら暑かろうとも飛行機の中は行先に関わらず少し寒いので、薄手のパーカーか何かはそもそも持っていくことになるのだけれども…。
  • 現金は10 OR(4200円)ぐらい常に持っておいた方がよい。多くの店でクレジットカードのタッチ決済ができる端末が導入されているが、時々決済端末が壊れていてカード決済できなかったり、現金のみの店があるので10 ORぐらい手元にあると安心。観光地の窓口でさえも端末が壊れてたことが2回もあり、現金に救われた。街中のATMもよく壊れていて引き出せないことがあるので、現金ない→近くのATM壊れてる のダブルコンボにやられないように気をつけたい。オマーンの通貨には硬貨もあるが、ほとんど使われておらず最小紙幣の0.1OR (40円)が実質最小単位なので、財布はマネークリップでも十分。
  • 物価は日本とほとんど同じか少し安いぐらい。食べた食事の中で一番安いのは0.4OR(167円)の朝ごはんカレー。一番高いのはホテルすぐ近くのショッピングモールにあるスモークチキンプレートで10OR。現地の人の一食の平均は1.5-2.0OR(600-800円)ぐらいだそう。ホテルは1万円弱で4星ホテルに泊まれるが、そのレベルでも歯ブラシやガウンはなかったので、自分で持っていこう。
  • 移動はOTAXIのアプリが大変便利。OTAXIが唯一のスマホからタクシーを呼べるタクシーで、かつ唯一のメータータクシー。公共交通機関が全くと言って良いほどないので、ほぼタクシーで移動することになる。一応Googleマップで移動経路を検索するとバスが出て来るが、街中でバスが走っているのはほぼ見ない。ネットや本でルートタクシーについての記述もあるが、2024年現在現地民もほとんど使っている様子がないのでOTAXIでの移動が無難。だいたい1分乗って100円ぐらいの感覚で初乗りが400円。タクシーに乗らなくてもアプリでルートを指定した瞬間に値段が分かるので超便利。ホテルや政府関係の建物には高級タクシーしか乗り入れできないという規制があるようで、OTAXIでホテルまで呼んでも近くの道路まで出てきてと呼び出される点は注意。そのために電話がかかってくるので現地で通話可能なSIMカード(eSIMが便利)の契約をオススメする。

OTAXIアプリ 2分ぐらいでタクシーが見つかる

まとめ

細かくいろいろと書いたが総括すると治安は良く平和で、オマーン人は人柄も良かった。再度訪れたいかと言われると、見るものは一通り見たのでもうしばらくは行かなくても良いかなという感じ。20年後ぐらいに変化を見にまた行きたい。一番最初に書いたオマーンに行きたい理由ははまさにそのままだったので、それに魅力を感じた人は是非訪れてみると良いと思う。 急ぎ足で良い人はマスカットは2日あれば十分で、1日は砂漠ツアー、1日は市内散策で問題ない。日本から行くと大抵アブダビ経由になるので時間に余裕があればドバイなどUAEの国にも寄って比較すると面白そう。

以上、山と海に囲まれたオマーンの熱海(?)マスカットでした。

マトラフォートからの景色